葬儀に欠かせないものと言えば「祭壇」です。 「祭壇」には、故人の遺影や位牌を安置したり、信仰の対象となる本尊や十字架等を祀ったりしたうえで、葬儀における祈りの対象とします。この「祭壇」には、宗教的な意味もありますが、そのうえで故人らしさを大事にアレンジするケースが年々増えてきています。
祈りの対象
葬儀における祭壇の持つ意味は、「祈りの対象」です。宗教儀式においても、告別においても、祈りの対象となります。
宗教儀式においては、祭壇の上部に信仰のシンボルを掲げて祈りを捧げます。信仰のシンボルとは、仏教の葬儀であれば大日如来や釈迦牟尼仏などのご本尊、キリスト教であれば十字架を指します。神道の考え方では、神は死の穢れを嫌います。よって神社では決して葬儀をせず、祭壇へ本尊にあたるものは置きませんが、三種の神器である勾玉、鏡、剣を祀ります。
また告別の意味においては、祭壇に故人を偲ばせるものを安置して祈りの対象とします。大きな遺影を置いたり、祭壇の手前に棺を安置したりします。さらに供物として故人の好きな物を捧げたり、故人が好きだった種類の花で遺影周りを飾ったります。参列者は焼香や献花の際に、祭壇に置かれた故人の遺影へ向けて祈りを捧げます。
また、儀式の意味においても、告別の意味においても大事な存在が、仏教における位牌、神道における霊璽(れいじ)です。位牌や霊璽は、本尊の下の壇に置かれます。
祭壇の種類
白木祭壇
日本の葬儀において最もスタンダードなのが、白木祭壇です。漆などで上塗りをしない白木のままの祭壇を使うことで、「思いもかけない突然の葬儀のために、急いで作った」ことを表しています。遺影を取り囲む荘厳な神輿、魔除けとしての竜のモチーフがあしらわれた六灯竜などの飾り物は、かつて葬列で使った葬祭品の名残とされています。白木祭壇は、主に仏式葬儀で使われますが、飾り物を取り払ったシンプルなものは、無宗教葬でも使われます。
生花祭壇
祭壇上にたくさんの生花をあしらった祭壇を、生花祭壇といいます。白木祭壇の飾り物を取り払い、壇上に生花を敷き詰めることもあれば、飾り物はそのままで、遺影周りにだけ生花を飾ることもあります。また、白木ではなく、アクリル製や、大きなテーブルに白い幕を張った祭壇が使われることもあります。故人が好きだった花があれば遺影周りにそれを飾り、全体には白や黄色、紫色を基調とした落ち着いた色味の花を使うことが多いでしょう。仏式葬儀や無宗教葬で使われます。
宗教ごとの祭壇
仏式葬儀では主に白木祭壇が使われ、最近では生花祭壇を使うことも多くなってきましたが、他の宗教では事情が違います。キリスト教の葬儀は教会で行うことが多く、教会の祭壇は上部に十字架などを掲げるほか、遺影と燭台、花を配置したシンプルなものです。また、神道の祭壇は、上の項にも示した三種の神器を祀るほか、儀式中にたくさんの供物を捧げたり、また外したりするため、祭壇の自由度は低くなります。キリスト教式や神道の葬儀でどうしても生花祭壇を作りたい場合は、神父や牧師、神職とよく相談しましょう。
オリジナル祭壇
故人が好きだったゴルフ場を祭壇上に再現する、画家の故人のために生前描いた絵を祭壇上に配置するなど、既存の形にこだわらない演出が可能なのが、オリジナル祭壇です。葬儀社によっては、過去の祭壇事例を参考に選べるケースもありますが、多くの場合、完全にオーダーメイドとなります。
祭壇がない葬儀
会葬者が少ない傾向にある現代では、祭壇がない葬儀も生まれています。数人だけが集まる葬儀なら、棺を取り囲んで祈りを捧げれば十分という考え方が成り立つためです。棺の周りに椅子を配置し、棺の頭側に遺影や供物を飾るための台を設けることで祈りの対象とします。主に無宗教葬で使われます。僧侶を呼びたい場合は、僧侶が儀式を行うための香炉や燭台を置く台が別途必要です。
祭壇の費用
祭壇の費用相場は、一般的な規模の葬儀であれば30万円~50万です。生花祭壇はお花を使うぶん、白木祭壇よりも費用が上がります。同じ規模の葬儀であっても、白木祭壇は30万円程度だけれど、生花をプラスしたら10万~20万円ほど費用が上がったというケースもよく見られます。
また、小さな式場、小さな葬儀であれば祭壇費用は10万円からというところもあり、一方で大きな式場、大きな葬儀になるにつれて費用がかかるようになります。また、オリジナル祭壇を作る場合は、デザイン料がかかるため、他の祭壇よりも割高になります。
例えば、会葬者300人規模といった大きな葬儀で、生花をいっぱいに敷き詰めたオリジナル祭壇を作る場合、祭壇料金だけで100万円を超えてしまうケースも少なくありません。
故人を偲ぶためにふさわしい祭壇を
祭壇は種類も費用もさまざまです。葬儀社からの提案をよく聞き考えて選び、「この白木祭壇に、親が好きだった花を足してほしい」といった希望をきちんと伝えたり、事前に相談する場合は必ず見積もりをもらうようにしましょう。祭壇は、葬儀の中心的存在です。故人と遺族にとって、ふさわしい祭壇となるよう、しっかり選ぶことが重要です。