遺言書とは、死後に財産をどのように分けるかを示したものです。
遺言書で財産の分け方について意思表示をしておくことで渡したい人に財産を譲ることができます。故人様が遺言書を作成していない場合は相続人全員で話し合って決めます。
遺言と遺言書との違い
遺言と遺言書は異なります。
遺言は死ぬ間際に自分の気持ちを伝えるための手紙のことで、遺言書は遺産の分け方を示した法的な書類です。遺言に自分の財産の分け方について書いても基本的に法的効力はありませんが、遺言が遺言書としての要件を満たしている場合は法的効力が発生します。
遺言の効力
1 誰に何を渡すのか指定できる
お世話になった人など、法定相続人ではない人に財産を譲ることもできます
2 相続する権利を剥奪できる
遺言書を作成する人が特定の相続人から虐待や侮辱などの被害を受けていた場合、その相続人から相続権を剥奪することができます
3 隠し子を認知することができる
遺言書で認知された子供は被相続人の子供として認められるため、法定相続人として財産を相続することが可能です
4 遺言執行者を指定できる
遺言執行人を指定しておくことで相続手続きを速やかにおこなうことができます
5 保険金の受取人を変更できる
保険法第44条で「生命保険の受取人を遺言書によって変更できる」と規定されています。保険金の受取人を変更した場合、遺贈によって保険金を取得したものとみなされ、相続税が課税されます。
遺留分
遺言書で誰にどの財産をどのくらい渡すのかを決めることができますが、完全に実現できるとは限りません。一定の範囲の法定相続人には遺産を最低限取得できる権利が認められており、その権利のことを遺留分といいます。
遺言書の書き方
遺言書には3種類あります。それぞれの作成の仕方についてご説明します。
自筆証書遺言
遺言者が遺言書の全文・日付・氏名を自筆し、押印して作成する形式です。
自筆証書遺言は特別な手続きをする必要がないため、いつでもどこでも作成することができます。なお、遺言書を勝手に開封してはいけません。家庭裁判所に遺言書を提出し、検認をおこなう必要があります。
公正証書遺言
2人以上の証人の立ち合いのもの、公証人が遺言者から遺言内容を聞き取りながら作成する形式です。
公正証書遺言を作成するには遺言者本人であることを証明するための実印と印鑑証明書と用意し、2人以上の証人と一緒に公証役場に行きます。そして公証人に遺言の内容を伝え、遺言書を作成してもらいます。遺言者が亡くなったら最寄りの公証役場に行き、遺言者の内容を確認し、相続手続きをおこないます。
秘密証書遺言
遺言者が作成した遺言を2人以上の証人と一緒に公証役場に持ち込み、遺言書の存在を保証してもらう形式です。
秘密証書遺言は、署名と押印だけ遺言者がおこなえば、遺言書をパソコンで作成したり、代筆してもらったりしても問題ありません。遺言書は遺言者自身で保管します。秘密証書遺言も自筆証書遺言と同様、勝手に開封してはいけなく、家庭裁判で検認してもらう必要があります。
遺言書を勝手に開封すると5万円以下の過料を科せられる可能性があるため、相続が開始する場合は、裁判所に遺言書を提出し検認の請求を行います。うっかり開封してしまったとしても、相続人の資格を失うことはありません。
近年、相続争いが増加傾向にあります。なおかつ複雑化している事も多いので、遺言書の効力や書き方などを専門家に相談し、親族間や兄弟間での争いを避け、円満な解決を図れるように遺言書についても考えてみてはいかがでしょう。